「ただいま」│I’m home.
2023.6.26 -[イベント]
思うように食事が摂れない日が続き、医師から告げられました。
「いつどうなっても、不思議ではありません」と。
ACP(人生会議)による対話のなかで、「最期まで三思園で過ごさせたい」とご家族から意向を伺えました。
けれども、それだけで終わらないのがわたしたち三思園の看取りケア。
「最期にしてあげたいことはありませんか?」と、ご家族へ尋ねます。
すると、「最期にもう一度、おばあちゃんを家に連れて帰りたい。でもきっと、無理ですよね……」とのお話が。
いいえ、無理ではありません。
三思園は、人生の最終段階までオーダーメイドの希望を叶える施設だから。
「何としても、お連れしよう」と心に決めて臨んだ当日。
朝から雨が降り、灰色の雲が空を覆っていました……。
しかし、ご本人・ご家族・スタッフの想いが届いたのでしょう。
ご自宅に到着した頃には、はらはらと降り続いていた雨がやんだのです。
雲のすき間から初夏の陽ざしが漏れてきました。
涼やかな風があたりを吹き抜け、空気は瑞々しい土や緑の香りがします。
ハイエースから降りると、ご自宅にはとても立派な畑が!!
一瞬、入所者さまの表情がほころびました。
担当介護職員と生活相談員が2名で対応し、ご自宅のソファまで。
ご家族から「畑のことや家のことなど、人任せにすることなくご自身でやっていた」と、ご自宅での思い出(ナラティブ)をたくさん伺うことができました。
お孫さんのひとりが、手をぎゅっと握って、優しくこう言いました。
「おばあちゃん。テレパシー送るから。」
今回の外出は「家に帰りたい」というご本人と、「家に連れて行ってあげたい」というご家族、そして、それを叶えたいという職員の想いが実を結び、叶えられたものでした。
「家庭とは、人がありのままの自分を、示すことができる場所である」
介護職員の一人として、その方に寄り添い、その人らしさを大切にしたいと思いながらも、やはり、ご家族の存在の大きさにはかないません。
ご家族の存在の頼もしさと温かさに触れ、介護という仕事のやりがいのひとつも、ここにあるのだなあと再認識。
きっと、ひ孫さんの心のこもった想いは、ご本人に届いているに違いありません。
テレパシーをもらって元気が出たね、うれしかったよ…
その10日後、三思園で穏やかにご逝去されました。
すてきな思い出をありがとうございました。