わなげ│Quits tournament
2021.3.25 -[イベント]
「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこし明りて。紫だちたる雲のほそくたなびきたる」
(春は明け方がよい。だんだんと白くなり、山のきわが少し明るくなり、紫がかった雲が細くたなびいているのがよい)
(『枕草子』より)
当デイサービスでは、3月24日(水)に「輪投げ大会」というレクリエーション活動を行いました。それは文字通り、輪投げをして各々が獲得した点数を競い合うのでございます。時には、他の利用者さま、あるいは職員と点数を競い合う、というのも一興でございます。
輪投げというと、なに、簡単なことじゃないか、というふうに思われるかも知れません。しかし、見るのとやってみるのとでは大違い。これがなかなか難しいのです。的を狙いすまし、輪を放っても、なかなか思うようにいかない。真剣勝負で挑んだ職員も、放った輪は的から大きく逸れたところへ、ヒューンと飛んでいき、輪はいずこのほうへとコロコロ転がっていったのでありました。そこへいくと、徐々に感覚、コツのようなものを掴んだ利用者さまが、ぴょいと放った輪がストンと的に入りますと、お見事!というような歓声と拍手が沸き起こります。
ところで輪投げというのは、シンプルな動作のように見えます。しかし、実は、日常生活に必要な動作、その訓練にもなっているそうです。例えば、輪を放る際には前屈みの姿勢を取りますし、足を踏ん張る力も使います。それから、肩から腕、指先と上肢全体の運動にもなりますし、身体のバランスを保ち、視界と筋力を協調させる必要もあります。実はこういったことが、日常生活で必要な動作、例えば、立ったり、座ったり、あるいは、自分で座っているお尻の位置を直したり、といったことの維持向上になっているそうです。わたしはリハビリテーションのような分野は門戸外でありますから、専門的なことはわかりません。しかし、ひとつわかることがあるとすれば、楽しみながら身体を、あるいは、こころをいきいきと保つことができるとするならば、それに越したことはない、ということでしょうか。
さて、最後に、松尾芭蕉の高弟にあたる、ある俳諧師は春に関して、次のような詩を読みました。
梅一輪 一輪ほどの あたたかさ
服部嵐雪
先述いたしましたように、当デイサービスでは、輪投げ大会を行いました。重なり合った色とりどりの輪は、見覚えのあるシンボルマークによく似ているように思いました。それは、3つの「おもい」を象徴しているのであります。それはどこにあったかというと、とても身近なところにあったのでございました。
written by 菊池